journal gris

2015.10.23

樋口愉美子さんのこと

インタビューは「EMBROIDERY WORKS」に掲載したので、
こちらでは少し個人的なお話を。
EMBROIDERY WORKS制作のためのインタビューの際に、
話題になりつつも原稿からこぼれた話などを。

 

刺繍作家、樋口愉美子さんにはじめてお目にかかったのは、2012年の夏のこと。

当時わたしは実用書の編集者として駆け出しで、
知識もツテも何にもなくて、ひたすらネットサーフィンをしつつ、とにかくいろんな展示会やセレクトショップを歩き回っていました。
(なんて言うと辛そうですか。行った先でかわいいアクセサリーとか買って、
はしゃいでいただけですが)

 

そんな時、偶然見つけた樋口さんのHP。
素人でも分かる、クオリティの高さ。
刺繍本編集暦の長い先輩も、驚くほどでした。
これは刺繍歴の長い大御所の先生に違いない……とプロフィールを探すも、謎。

偶然にもご友人の方とのコラボ作品が展示されているタイミングだったので、
とにかく足を運んでみました。

そこで見られたのは2点だけだったのですが、
その細部まで美しい糸目に驚きました。

どきどきしながらTwitterで「樋口愉美子さんすごかった!」とつぶやいたことろ、
なんとご本人から「ありがとうございます!」とリプライが。

これを逃す手はない…! と、そこから「会いたいです!」と前のめりなメッセージを送り、
お目にかかれることに。

 

 

数日後、企画書も提案も何も持たず、アトリエに伺いました。
そこで拝見したのが、「EMBROIDERY WOEKS」掲載の作品の数々です。

実は、あの1冊でも全然掲載しきれていません。
まだまだあります。
そして実物は、もっともっと迫力があります。
「刺繍」のイメージを覆します。

 

こんな人がいるんだ、と思いました。
Web以外ではほぼ作品を公開することなく、
10年かかってもなかなか作れない量の作品を、たった2、3年で作ってしまう。
しかも、見たことがないほどのクオリティで。
さらに聞けば、刺繍を本格的にはじめてから数年とのこと。

天才そのものだと思います。
狂気さえ感じます。
樋口さんの天才が故の厳しさや集中力、ぜひ写真集掲載のインタビューで感じてください。

お話すると、とっても可愛らしい、作風そのものの柔らかさをもつ方なのですが。
この可愛らしさも、インタビューで感じていただけるといいなと思っています。

 

ここからは、grisとしては書かない方がいいのかもしれませんが。

はじめて作品を拝見した後、あまりに圧倒されてしまって、
どんな本を作ってもらえばいいのか実は全く思いつかなかったのです。

だから正直なところ、文化出版局さんから「1色刺繍と小さな雑貨」が出たときは悔しかったです。笑

そんなダメな編集者ぶりを発揮しつつ、2014年に「WOOL STITCH」(マガジンランド刊)を担当させていただき、初対面のときとは違うすごさも痛感したりしながら、2015年2月にgrisをスタートしました。

樋口さんのお仕事は、grisのスタートの背中を押してくださっています。
樋口さんの本が今まで手芸をしてこなかった人にも受け入れられるのを見て、
「手芸書の棚」を飛び出した仕事ができるのでは、という思いを強くしました。

「手芸」って、言葉に強いイメージがついてしまっているので。
でも、そのイメージに全く収まらない人や作品もたくさんあるんです。

 

 

もうすぐ、樋口さんの展示会がはじまります。
大型作品が見られる最初で最後のチャンスと思いますので、
ぜひ多くの方に実際にお越しいただき、実物をご覧いただけたらと思います。

正面から、横から、遠くから、近くで、繰り返し見てみてください。
樋口さんの天才さ、堪能していただきたいです。

 

 

樋口愉美子さん

刺繍作家。多摩美術大学卒業後、ハンドメイドバッグデザイナーとして都内ショップにて販売。2008年より刺繍作家としての活動を始める。現在は、刺繍本の制作やネットにて作品を発表、販売している。 http://yumikohiguchi.com/

 

樋口さんのキット

ウールステッチキット[bee]
ウールステッチキット[flower]

 

樋口さんの本

EMBROIDERY WORKS
WOOL STITCH