2017.7.23
「favori(2017年8月号)」掲載久しぶりに、ゴージャスで華やかなファッションが流行っていますね。
装飾は、ちょっと過剰なくらいがちょうどいい。そんな気分が、街にメディアにあふれる昨今です。
総スパングルのジャケットなんて、80′ のマイケル・ジャクソンのステージ衣装みたいなものも、
街中でみかけるようになりました
輝きのあるパーツといえば、二、三 年前のビジューの流行が思い出されます。
猫目型のビジューが並んだネックレスや、首回りに縫い付けられたカットソーなど。
これらと昨今のテイストの違いは「繊細さ」。
ビジューは、メタルの台座があるために厚みがあり、
アクリルはともかくガラス製のものはそれなりの重さもあります。
小さくても目立つ、その存在感が魅力でした。
それに比べて、スパングルの繊細なこと!
種類によるものの、多くは薄く儚げな趣きです。
まるでシェルのようなパール調の輝き、
フランスらしいスモーキーなパステルカラーなどを眺めていると、
口に含めば甘そうで、舌にのせたらすっと溶けてしまいそうに思えます。
先日、大戦直後の日本製スパングルはお米が原料だから舐めると溶けちゃうのよ、
と先生に教わっていたとある方から伺いました。
真偽のほどはわかりませんが、本当にうす甘そうで、一層舐めてみたくなるお話です。
スパングルは一枚一枚が薄いため、びっしりと縫い留めてもそれほど厚みが出ませんし、
動きもあります。
軽いため、オー トクチュール刺繍に多用されるオーガンジーのように薄い布上でも使えます。
最近の女性らしく華やかで装飾的な流行にぴったりです。
もちろん一過性の流行アイテムだけでは終わらないでしょう。
「存在感のある輝きにはビジュー」がひとつの定番になったように、
「やわらかな光を纏いたい時にはスパングル」が永く愛される定石になると思います。
手作りにスパングルを取り入れる場合、
ビーズステッチのように布を介在させず針と糸だけでアクセサリー等に仕立てることもできますが、
多くは刺繍が用いられます。
フラワーパングルのように印象的な形を選べば、
既成のものに数枚留めるだけでも印象が変わります。
早くたくさん刺繍するには、オートクチュール刺繍で使われる「リュネビル針」が有用です。
スパングルを留め付ける機械が開発されたのは1986年と比較的最近なことからも分かるように、
複雑な留め付け方は人の手でないとできません。
ハイブランドのコレクションドレスをはじめとするオートクチュールの世界では、
未だに職人がひと針ひと針刺繍で留め付けています。
美しい色や形を堪能しながら、職人仕事に思いを馳せながら。
スパングルの魅力をお楽しみください。