2017.1.7
「favori(2017年2月号)」掲載25番。刺繍糸の代名詞ともいえる、永遠のスタンダード。
小さな手芸店でも必ず取り扱いがあり、色数も豊富。
質のいいリネンとDMC25番刺繍糸全色(481色!)が手元にあれば、
これだけで五十年は退屈せずにいられるのでは。
でも、そんな中あえて別の刺繍糸も使ってみたい……という方に。
刺繍という手芸は、その自由さが魅力といえるでしょう。
針に糸を通して模様を描けば、もうそれが刺繍。
布や糸の素材、道具や技法も様々です。
イギリス王室の煌びやかな「ゴールドワーク」。
モードの世界の「オートクチュール刺繍」。
スペインのクールな「ブラックワーク」。
インドの濃密な「ミラーワーク」、パラグアイの「ニャンドゥティ」。
日本国内に目を向ければ、
そのグラフィカルさが懐かしくも新しい「こぎん刺し」や、
着物を華やかに彩る「日本刺繍」。
国内でも定番になりつつある、「ハンガリー刺繍」や「ドロンワーク」など。
それぞれ土地や文化を背景に工夫された糸が使われています。
王族がその権力を誇示するために精緻を極めた技巧、
呪術的な意味合いが強いもの。
深くて広い世界です。
今までと違う刺繍を、自分の手で刺してみたい。
自分の刺繍の世界をもっと広げたい。
その際まずは今までと違う糸を使ってみるのは一番手軽な方法だと思います。
専門の道具や生地に比べ、糸は比較的安価ですし。
フリーステッチやクロスステッチといった慣れ親しんだ技法で、
いつもの布や枠をそのまま使い、糸だけ変えてみる。
その際、まずは入り口としてこの「タペストリーウール」はおすすめです。
特徴は毛糸らしいもこもことした弾力。
一見してわかるほどに太く、針はリボン刺繍用など
穴の大きなものが必要ですが、布は一般的なリネンが問題なく使えます。
一本取りで一針刺しただけで、25番刺繍糸とは全く違う
ふっくらとした表情が楽しめます。
せっかく新しい刺繍糸に挑戦するのであれば、今までとの差が大きなものを。
糸って、細いので。
例えばサテン糸と綿糸、束で見ると随分違うのですが、
二本取りでストレートステッチを一針刺しただけだと、そんなに大きな違いを感じません。
広い面積の立体的なサテンステッチもあっという間に埋まりますし、
フレンチノットステッチを集めたときの可愛らしさも独特です。
一針で埋まる面積が広いため、布一面にたっぷりと
刺繍をしたい方にもおすすめです。
素朴な風合いと、ざくざくと大胆に刺す楽しさが味わえます。
ご自身の新たな刺繍の好みを知るきっかけにもなるのではないでしょうか。
見た目も、刺した風合いも愛らしいウール刺繍糸、
冬の日の刺繍にぜひ取り入れてみてください。
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photograph:佐久間ナオヒト
「favori(2017年2月号)」に掲載された商品はこちらからお求めいただけます。
■「WOOL STITCH」(マガジンランド)¥1,350-
著者:樋口愉美子
タペストリーウールと25番刺繍糸を組み合わせた図案を多数掲載。
■WOOL STITCH KIT(gris)¥2,400-
design:樋口愉美子
書籍「WOOL STITCH」からflowerとbeeの2図案をキット化。
■DMCタペストリーウール ¥100-/束
boutique grisでは全390色中「WOOL STITCH」掲載の30色を取り扱い中。